Google Cloud Platform(GCP)は、DDoS攻撃に対する強力な対策を備えたクラウドサービスを提供しており、その中心的な役割を果たすのがGoogle Cloud Armorです。
この記事では、GCPにおけるDDoS対策の概要と、Cloud Armorを中心とした対策の詳細について解説します。
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GCPにおけるWAFとは
まず、GCPのDDoS対策の基盤として重要な役割を果たすのが、Web Application Firewall(WAF)です。WAFは、ウェブアプリケーションを攻撃から保護するための防御壁として機能し、特にクロスサイトスクリプティング(XSS)やSQLインジェクションといったウェブベースの脅威に対応します。WAFは、トラフィックの監視やフィルタリングを行い、悪意のあるリクエストを検出してブロックします。
GCPにおけるWAFは、特にGoogle Cloud Armorによって提供されています。Cloud Armorは、HTTP(S)リクエストをフィルタリングし、悪意のあるトラフィックをブロックすることで、ウェブアプリケーションを保護します。また、GCPのグローバルなインフラストラクチャを活用することで、分散型DDoS攻撃にも対応可能です。
Google Cloud Armor
GCPで提供されるWAFの中核を担うのがGoogle Cloud Armorです。Cloud Armorは、ウェブアプリケーションに対する様々な攻撃から保護するための高度なセキュリティ機能を提供しています。その主な特徴は以下の通りです。
DDoS攻撃対策 Cloud Armorは、GCPのグローバルネットワークを活用し、DDoS攻撃を軽減する能力を持っています。特に、分散型サービス拒否攻撃に対しては、Googleの大規模なインフラがその威力を発揮し、大量のトラフィックを処理することができます。
プリコンフィグルールセット Cloud Armorは、既知の攻撃パターンに基づいて事前に定義されたルールセットを提供しており、これにより迅速に一般的な脅威から保護することが可能です。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングに対する防御が容易に設定できます。
カスタムルールの作成 Cloud Armorでは、カスタムルールを作成し、特定の条件に基づいてトラフィックを許可または拒否することができます。例えば、特定のIPレンジや地域からのリクエストをブロックしたり、特定のHTTPメソッドを制限することが可能です。
レートリミティング レートリミティング機能を使用して、特定のクライアントからのリクエスト数を制限し、過剰なアクセスによるサーバー負荷を防ぐことができます。これにより、悪意のあるボットやスクリプトによる攻撃を軽減できます。
リアルタイムモニタリングとアラート Cloud Armorは、リアルタイムでトラフィックを監視し、異常なトラフィックパターンを検出した場合には即座にアラートを発します。これにより、管理者は迅速に対応を行うことが可能です。
Cloud Load Balancingとの連携
GCPのDDoS対策は、Cloud Load Balancingと連携して効果を発揮します。Cloud Load Balancingは、トラフィックを複数のサーバーに分散させることで、負荷を分散し、サーバーのオーバーロードを防ぎます。この機能により、DDoS攻撃のような大量のトラフィックが発生した場合でも、サービスが停止するリスクを軽減できます。
さらに、Cloud Load Balancingは、Google Cloud Armorと統合されているため、攻撃トラフィックを効率的にフィルタリングし、適切な対策を講じることが可能です。
WAFサービスの詳細
1. DDoS防御機能
Google Cloud Armorは、特にDDoS攻撃に対する防御機能に優れています。Cloud Armorは、ネットワークレイヤーの攻撃やアプリケーションレイヤーの攻撃に対して、高度な防御策を提供します。
ネットワークレイヤー攻撃への対策ボリューム型の攻撃(例えばUDPフラッドやSYNフラッド)に対して、GCPのグローバルネットワークが攻撃トラフィックを分散させ、インフラストラクチャの負荷を軽減します。
アプリケーションレイヤー攻撃への対策HTTP GET/POSTリクエストを悪用したアプリケーション層のDDoS攻撃にも対応可能です。Cloud ArmorのWAFルールを使用して、特定の攻撃パターンを識別し、攻撃トラフィックをブロックすることができます。
2. セキュリティルールのカスタマイズ
Cloud Armorでは、ユーザーは独自のセキュリティルールを作成することができます。これにより、攻撃を特定の条件で細かくフィルタリングし、ニーズに応じた防御策を実装することが可能です。
IPアドレスのフィルタリング特定のIPアドレスやIPレンジからのトラフィックをブロックすることができます。これにより、悪意のあるクライアントやボットからの攻撃を事前に防ぐことが可能です。
地域別の制限地理的な制限を設定することで、特定の地域からのアクセスを許可または禁止することができます。これにより、特定の国や地域からの攻撃を防ぐことが可能です。
3. レートリミティングと自動化
レートリミティングは、特にDDoS攻撃に対して効果的です。Cloud Armorでは、一定期間内に許容されるリクエスト数を制限し、過剰なリクエストがサーバーに到達する前にブロックすることができます。
また、GCPの他のツールと連携することで、DDoS攻撃に対する対応を自動化することができます。例えば、Cloud MonitoringやCloud Loggingと統合することで、異常なトラフィックが検出された際に自動でアラートを発し、迅速に対応策を講じることが可能です。
まとめ
GCPにおけるDDoS対策は、特にGoogle Cloud Armorを中心に展開されており、DDoS攻撃を含む幅広い脅威に対して効果的な防御を提供しています。Cloud Armorは、グローバルなインフラを活用し、DDoS攻撃を効率的に軽減するだけでなく、カスタマイズ可能なセキュリティルールやレートリミティングなど、多層的な防御策を提供します。
また、Cloud Load Balancingとの統合により、トラフィックの分散とフィルタリングを効率的に行うことができ、攻撃トラフィックの影響を最小限に抑えることが可能です。