
AzureにおけるWAFとは
Azureでは Web アプリケーションを保護するための 2 つの主要な WAF ソリューションとして、Application Gateway WAF と Azure Front Door WAF があります。
これらはどちらも強力なセキュリティ機能を備えており、それぞれ異なる特徴を持っています。ここでは、各ソリューションの概要と、どのようなケースでどちらを選ぶべきかについて解説します。

Application Gateway WAF の概要
Azure Application Gateway WAF は、主にアプリケーション層(レイヤー 7)のセキュリティとロードバランシングを提供するサービスです。WAF 機能が統合されており、Web アプリケーションに対する様々な攻撃から保護します。このソリューションは、主に単一リージョンでのアプリケーション保護を目的としており、細かいトラフィック管理が可能です。

主な特徴:
アプリケーション層の保護:HTTP/S トラフィックを監視し、SQL インジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)などの攻撃を防御します。
カスタマイズ可能なルールセット:OWASP の規定ルールに加えて、独自のカスタムルールを作成し、特定の脅威に対する対策を強化できます。
ロードバランシング機能:Web アプリケーションのトラフィックを効率的に分散させることで、パフォーマンスと可用性を向上させます。
リージョン内のスケーラビリティ:トラフィック量に応じて自動的にスケールし、パフォーマンスを維持しつつセキュリティを確保します。
利用に適したケース:
単一リージョンでの Web アプリケーション保護:主に一つのデータセンターや地域に集中した Web アプリケーションを持つ場合、Application Gateway が最適です。
細かいトラフィック管理:トラフィックのルーティングやルールのカスタマイズが必要な場合に有効です。
内部ネットワークのセキュリティ:オンプレミス環境や VNet 内でのアプリケーション保護に適しています。
Azure Front Door WAF の概要
Azure Front Door WAF は、グローバルに分散した Web アプリケーションへのセキュリティとパフォーマンス向上を提供するサービスです。Front Door は、CDN の役割も兼ねており、Web アプリケーションのアクセラレーションやコンテンツのキャッシュ配信機能を提供しつつ、WAF によってセキュリティを強化します。

主な特徴:
グローバルなアプリケーション保護:地理的に分散したユーザーに対して、同じセキュリティポリシーでアプリケーションを保護します。
高速なコンテンツ配信と DDoS 防御:WAF に加えて、CDN の機能を活用してユーザーに近い場所からコンテンツを配信し、同時に DDoS 攻撃に対する防御も提供します。
簡単なスケールアウト:グローバルに展開されるアプリケーション向けに、迅速なスケーリングと負荷分散が可能です。
Azure Traffic Manager との統合:エンドユーザーに最適なルーティングを提供し、応答速度を向上させます。
利用に適したケース:
グローバルな Web アプリケーションのセキュリティ強化:ユーザーが複数の国や地域に分散している場合、Azure Front Door を使用することで、各地域での一貫したセキュリティ対策とパフォーマンスの向上が可能です。
パフォーマンス向上が求められるケース:アプリケーションのレスポンス速度を高速化しつつ、セキュリティも向上させたい場合に効果的です。
DDoS 防御:特に大規模な分散型サービス拒否(DDoS)攻撃に対して高い防御力を持っています。
Application Gateway WAF と Azure Front Door WAF の違い
1. 対象とするアプリケーションの範囲
Application Gateway WAF は、主に単一リージョン内でのアプリケーション保護に強みがあります。ローカルなアプリケーションや VNet 内での内部アプリケーションに最適です。
Azure Front Door WAF は、グローバルに展開されたアプリケーションを保護するために設計されており、複数の地域に分散したユーザーに対する最適化を提供します。
2. パフォーマンス向上の機能
Application Gateway WAF は、アプリケーション層のロードバランシング機能を備えており、Web アプリケーションのトラフィックを効率的に管理しますが、グローバルなコンテンツ配信やアクセラレーション機能は持ちません。
Azure Front Door WAF は、CDN と連携し、グローバルなユーザーに高速でコンテンツを配信できるため、レスポンス時間の短縮が期待できます。
3. 導入の柔軟性
Application Gateway WAF は、個々のアプリケーションに対して詳細なルール設定が可能で、カスタマイズ性に優れていますが、スコープは主に単一リージョンに限定されます。
Azure Front Door WAF は、グローバルにわたるトラフィックを統合的に管理でき、スケールも容易ですが、詳細なアプリケーションごとのカスタマイズ性では Application Gateway に劣ります。
まとめ
Application Gateway WAF と Azure Front Door WAF はどちらも強力なセキュリティソリューションですが、対象とするユースケースが異なります。単一リージョン内のアプリケーションや、ローカル環境で細かいトラフィック管理が必要な場合には Application Gateway WAF が適しています。一方、グローバルに分散したユーザーに対して一貫したセキュリティとパフォーマンスを提供しつつ、DDoS 防御も必要な場合には Azure Front Door WAF を選ぶべきです。
それぞれのアプリケーションのニーズに応じて、最適な WAF ソリューションを選択することで、Web アプリケーションの安全性とパフォーマンスを最大化できます。